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(せーのっ…と)
そんな心の中の掛け声と共に、一応包丁や火を扱ってても雪羽が怪我しないように雪羽の両腕を片腕で緩く掴み上げながら、もう一方の片腕で雪羽の腰をホールドする。
そして一気に近付けた雪羽の耳へと、息を吐くように囁いた。
「なぁにしてんの?」
「ひあぁっ!?」
びくんっ!と、まるで前立腺を擦りあげられたように雪羽の身体が大きく跳ねる。
そして顔を真っ赤に染めながら、涙混じりの眸で肩越しから俺を睨みあげてきた。
「こっちが"何してんの"…だ、ばかっ…!」
「んー、驚かせたな、ごめん」
「驚いたどころじゃねぇっ!!
…あ…、もしかして、起こした?」
あれだけ威勢良く怒鳴ってたのに、はっと気づいたようにそう言うと、しゅんとしてしまう。
あー、やばい抱き締めてぇ!
「気にすんな、普通に起きたよ」
「ほんと?」
「ほんと。…つーかチョコレート作ってたのか?」
「あぁ。でもなんか…上手くいかなくて」
「作ろうか?」
「いや…、作りたい」
「ふぅん」
なんでか分かんねぇけど、どうしても自分で作りたいらしい。
でも、どうやらテンパリングの時点から混乱してるようだ。
だから俺は少し考えてから、そっと右で右、左で左の雪羽の手首を取ると、また耳元で囁いた。
「じゃあ、一緒にやってみっか」
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