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口に含んだチョコレートは、ココアの苦みとチョコレートの甘み、そしてリキュールの風味がしっかりときいている。
いつも通りの材料、分量、手順なのに、それでもこんなに美味しいと感じるのはやっぱり雪羽が作ったからだろう。
「…いつまで指、食べてるつもり?」
「チョコがなくなるまで」
「もうなくなってるだろ!」
いよいよ顔を真っ赤にして、俺は指を引き抜かれた。
でも俺の手からは逃げられない。
しっかりと掴んで離そうとしないから。
「離せ」
「なんで離さなきゃなんねぇの?」
「恥ずかし…だろっ!」
「じゃあ、恥ずかしくなくなること、しようか」
「っ…!?」
腰に手を回してしっかりと引き寄せる。
多少暴れても逃げられないようにして、わざと感じるように尻を撫でた。
「ん…っ、」
「チョコプレイされてぇの?」
「ひきょ、うだろ!」
「なんとでも。覚悟は出来たか?」
「うぁ!?」
一気に雪羽を抱き上げる。
ボールに入れたまんまだった加工もしていないクーベルチュールチョコレートを塊のまま掴みあげると、そのまま寝室へ向かった。
「待て馬鹿!チョコ持つな!それ高ぇんだぞ!!」
「バレンタイン、バレンタイン。
今日のチョコの役目は愛を育むことですよー」
「やめろっ、…っ!」
叫ぶ雪羽をベッドに沈めて、その上に覆い被さる。
シーツの傍らにチョコを置いて、随分と不機嫌そうに頬を膨らます雪羽のことを見た。
「せ…「馬鹿、変態!」…ごめんって」
「チョコ、どうする気だよ…」
「食うよ、雪羽共々」
「馬鹿、せめて俺が作ったのを食べろよ」
「ンな勿体ねぇことできるか」
「意味ワカンネー」
雪羽のシャツをボタンを外していく。
雪羽も漸く観念したように俺の首へと腕をまわしてきた。
(やっと素直に抱かれる気になってくれたか…?)
「お返しは…3倍返し、だぞ」
「へ?…あぁ、了解。オヒメサマ」
「姫って言うな…」
ぎゅうって音が出るくらい雪羽に首を締め付けられる。
きっとこれが雪羽なりの意趣返しなんだろう。
(充分チョコの時点で最高の意趣返し、だけどな)
俺は、頭の中で今夜誘うつもりだったレストランを、雪羽が好きそうなケーキがいっぱいある店に変更して、雪羽をしっかりと抱き締めた。
「昨日より3倍以上感じさせてやるよ」
(愛してるとありがとうを、ベッドの中で何度でも言いながら、な)
END.
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つうか、3倍返しなんてどこで覚えてきやがったんだ…?
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