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そしてある日の朝、ラッパ吹きの誕生日の朝のこと。
うさぎは外の騒がしさで目を覚ましました。うさぎは、急いで若草色のチョッキを羽織って家を出ます。
「ちょいとそこのお兄さん、これは何の騒ぎだい?」
「大変ですよ、うさぎさん!ラッパ吹きの奴が公園で暴れているんだ!あんた、何か知らないのかい?」
「何だって…?」
うさぎは顔面を思い切り殴られたような衝撃を受けました。胸の中から湧き上がる、むかむかと吐き気に似た嫌な予感に、うさぎは歯を喰いしばって走り出します。
公園の方からは、何か固い物を力いっぱいぶつけるような、嫌な音がしていました。ひっきりなしに、何度も何度も、その音はしていました。
人混みを掻き分けて進むと、公園の中心にラッパ吹きはいました。村人たちは、誰一人、彼に近づこうとはしませんでした。
ラッパ吹きは、錆びたラッパのペトルーシカを、コンクリートに打ち付けていました。
「や、やめろ!!」
最早、目の前で起こっているのが何なのか、分かりません。それでもうさぎは、ぼろぼろと涙を流しながら叫びましたが、ラッパ吹きはいっこうにやめようとはしませんでした。
錆び付いて、緑のコケまで生えた、オペラのような素晴らしい歌を唄うペトルーシカは、嫌な音をたてながら少しずつ死んでゆきました。
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