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ラッパ吹きのいる公園に戻ると、彼とペトルーシカはいつもと変わらない綺麗な歌を、鳩たちに聴かせてやっていました。
“早かったな、うさぎ。用事はもう済んだのか?”
うさぎは、さっきの会話がラッパ吹きに聞こえたのではないかとひやひやしていましたが、いつもと変わらない様子の彼を見てほっとしました。
“どうしたんだ?様子が変だぞ、うさぎ。”
「何でもない、少し腹が減っただけさ。」
“ははっ、それはいつものことだな。”
公園にまた二人の笑い声が響きます。夕焼けの黄金色に染まり始めた公園は、うさぎには哀しい叫び声をあげているように見えました。
「な、なぁ。お前さん、もう少しで誕生日だろう。何か欲しいものあるか?」
苦し紛れに話題を変えたことは明白でしたが、ラッパ吹きはいつもの調子で答えます。
「パンが欲しい?そいつはお前さん謙虚すぎるぞ。誕生日なんだからもっと欲を出さなくちゃいけねぇぜ?」
うさぎは笑いながらそう言って、今日青年とした話を決してラッパ吹きには言わないと心に誓いました。
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