プロローグ

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「はいはい。分かりました。じゃあ、解散。これで終わり。何もなかったことにしよう。それでいいよね」  桜が散り始める四月下旬。  入学式が終わり、友達ができ、そろそろ本格的にイベントが開始しようとする始まりの時期に、わたしの周りは崩壊した。  もう二年生だから、時期なんてものは関係ないかもしれないけど、それでもなんだか嫌な気分になるのは否めない。  ギターを入れたケースを片手に、音楽室を後にする。  最後に何か聞こえたような気がするけど、無視することにした。  1  昼休みが終了の鐘が鳴る十分前に、わたしは自分の席に座った。  同時に、だらしなく姿勢を崩す。  春の風は、教室の雑踏が気にならないぐらいには気持ちいい。  ああもう、このまま寝てしまいたい。 「こらこら。もう授業始まるのに、何をしているの。起きなさい、咲」  肩を揺すられる。聞き覚えのある声に、わたしは緩慢な動作で顔を上げた。
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