3人が本棚に入れています
本棚に追加
ガタンゴトン、ガタンゴトン
ガタンゴトン、ガタンゴトン
僕の目の前を、特急電車は太陽の光を反射させながら、周りの空気を巻き込み、強い風を作りながら走り去って行く。
やがて視界は広がり、さっきまでの電車が通りすぎる前の風景から、少し形を変えた世界が、疲れた僕の目の中に入り込んでくる。
見慣れた風景が一瞬、景色を変える瞬間。
いや、その景色を変えた瞬間でさえ、見慣れた風景なのかもしれない。
神路賢吾
彼は通りすぎた電車のあとの一瞬の中で、そんなことを考えていた。
彼は世界を見るのは嫌いだ。
早く目をつむりたい。
日々そんなことを感じながら生きている。
そんな彼にはある特殊な、人には言えない能力が備わっていた。
最初のコメントを投稿しよう!