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「それらを答える義理はありません」
下手に嘘を付くより、ごまかした方がやりやすい。
「そなたはもしや、神託を授かった勇者か?」
神託?勇者?
いえいえ。
強いて言えば、自分の直感で盗みに来た空き巣です。
そんなご大層な者ではありませーん。
「それ以上俺の事を探るな。余計な詮索は止めろ」
いや、なんかこれ以上問い詰められるとボロが出そうで怖いからね!
「……わかった」
話が早い。
流石一国の王。
「なら俺はかえる」
「…………」
無言で自分の背中を見送る王。
そして姿を消した。
☆ ☆ ☆
王は考えた。
あれは何者であったのかを。
颯爽と現れ、そして自分たちを助けた若者を。
彼は、王族だけに伝わる伝説を思いだしていた。
数々の魔剣、神剣を使いこなし、そして、世界の混沌を打ち破る剣士の物語を。
神獣や魔獣までも侍らせ、強大な悪を討つ英雄の話を。
彼がそうだと言うのか。
「……まあしかし」
事実がどうであれ、我々を助けられたのだ。
もし伝説通りだと言うのなら、また彼は颯爽と現れ、我らの剣となろう。
「…………神の導きが有らんこと」
胸に十字架を切り、そして静かに祈った。
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