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「ゆっくりと、死んでいった。最後まで、最期までずっと見ていたんだ。愛刀 夢追と目があったままだったから、あいつは死ぬ間際まで、汚いものを見るぼくと目があっていたってことになるね」
どんな気持ちだったのかな、と療は言った。
「呼吸が少なくなって、うめきが少なくなって、流れる血が少なくなって、目から力が抜けていって、体から力が抜けていって、徐々に徐々に、生命がなくなっていって、最期は、魂が抜けるってああいうことを言うんだなっていうぐらい、スッ……て」
それから、一晩中、死体を見ていた。らしい。視てない愛刀 夢追に見られて、観てない療は死体を見ていた。
そして、夜になっても帰ってこない療たちを不審に思った両親が探しに来て、見つけられたらしい。
死んだ一人と、死んだようになっている一人を。
「資格がないんだよ、ぼくは」
「…………」
「治癒能力者の資格がないんだ。だからならないんだよ。なれないんだよ。”落ちこぼれ”になったのは当然なのかな。生まれながらに治癒能力者。でも、治癒能力者に一番大事な助けようって気持ちが、ぼくには欠けていた。だからぼくは一生”落ちこぼれ”でいるしかないし、ほかに行く場所がないんだよ」
さっき能力を使わないっていったのはね、と療が布団から腕を出す。
「ぼくが能力を使ったら、失礼だから。全国の治癒能力者に。一生懸命勉強している人たちに、ちゃんと将来人を救おうとしている人に失礼だから」
「……そんなこと、ねえよ」
「じゃあ、愛刀 夢追に失礼だから」
あなたを見殺しにしたのに、友達を助けずに、別の誰かを助けることは、失礼だから。そんなめちゃくちゃなことを、療は本気で言っていた。
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