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和光 明徳の肩を叩く手があった。
それはポンと軽い衝撃だったのだが、今の今まで目を閉じ、自分の世界に集中していた明徳はその衝撃にビクッと体を震わせる。
殴りかかる勢いで振り返ると、肩を叩いた張本人は明徳以上に驚いたようで、その大きな体をのけぞっていた。
驚きと恐怖が半分ずつ混ざった表情の明徳だったが、見慣れた顔がそこにあり、一気に顔が弛緩する。
「なんだ、司か。驚かさないでよ」
「なんだとはなんだ」
大村 司が苦笑いで明徳を落ち着かせる。明徳を席に座らせると、
「なあ、ちょっと訊いていいか」
「なに?」
「あの黄昏ブラザーズはなにしてるんだ?」
黄昏ブラザーズ? 首を傾げると司の人差し指が真っ直ぐある方向を向いている気付いた。
なにがあるかと顔を向けると、なるほど、確かに夕焼けが似合いそうな二人が窓際に並んでいる。窓の外は快晴だったが、二人はお構いなしだ。
「黄昏てるんでしょ」
「なぜに?」
「そりゃあ、行事だからに決まってるじゃない」
「ああ」と司は納得しかけて「で?」また首を傾げた。
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