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前日に担任である穂高から行事の話しを聞いたときから、大輔はずっと憂鬱であった。
個人戦でもチーム戦でもない。クラス一丸となって戦う『戦争』だ。個人戦も嫌なことに変わりないが、戦争はもっと嫌。
可能な限り参加したくない。そんな気持ちが全面に出ていたのだろう「サボるか」と自然に声に出ていた。
そしてそれがいけなかった。
隣にいた明徳に独り言を聞かれてしまった。
「なに言ってんのさ、大輔。行事は全員参加だよ。休むなんてとんでもない」
天使のような笑みだった。
「明日、迎えに行くからさ。一緒に行こうね」
悪魔のような提案だった。
冗談かと思われた明徳の提案は、次の日現実のものとなった。
翌日。本当に明徳が最下荘へ迎えに来たのだ。
最下荘にいる人はなぜか真面目な人が多いため、「今日だけ休ませてください」と言う大輔のサボりたい発言は取り合ってくれない。
大家さんという鉄壁にして最高の監視もあったため逃げることは叶わず、半ば追い出されるようにして外へ出た。
外ではすでに明徳が手を広げて彼の外出を待っていた。
「おはよう、大輔。清々しい朝だね」
「お前は鬼か」
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