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「行事は好きだが乗り気でない」という魔術師にしてはなかなか珍しい感覚を持つ豊と教室で意気投合したものの、だからと言ってなにかが変わるわけではない。
行事を待ちわびる空気に包まれたまま過ごした十数分。穂高が教室に顔を出したときは歓声が上がったほどだ。
穂高が教壇に上がるまでの間に自然と席に着くクラス。大輔の席は一番後ろなので級友の後ろ頭しか見えなかったが、おそらく瞳を輝かせていることだろう。
……ああ、辛い。
朝の挨拶もほどほどに、早速今日の行事についての説明に入る。ほどんど昨日聞かされた内容をなぞったあと、穂高は訊いた。
「さて、じゃあリーダーを決めようか」
チームに別れて行動する行事と違って、クラスが一度に行動する戦争はリーダーが必要だ。
前回の戦争では司がその役割を担っていた。
穂高は一応立候補者を募ったが、名乗り上げる人はいなかった。ひそひそ声には司の声が混じっていたし、目線も司に集まっている。
決まりきった流れのように、司がリーダーに選ばれた。司が率先して手をあげることは最後までなかったが、まんざらでもなさそうだ。拍手をもらって喜んでいる。
「なあ、なんで司はあんなに嬉しそうなのに手を挙げなかったんだ? リーダーやりたかったんだろ」
明徳に小声で訊く。明徳は顔を近寄せて言った。
「ほかにやりたい人がいたらやらせてあげようっていう司なりの配慮だよ。自分が何回もリーダーになるのは悪いと思ってるんじゃないのかな。ほら、内申点とかあるし」
なるほど、納得だ。
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