2232人が本棚に入れています
本棚に追加
「表現ってレベルじゃなかった。ぐしゃぐしゃって言葉がそこにあって、ぐしゃぐしゃって言葉以上にぐしゃぐしゃで、ぐしゃぐしゃって言えないほどでぐしゃぐしゃで、ぐしゃぐしゃってほかに使えないほどぐしゃぐしゃだった。でも、多分助けられた」
治癒能力者。
自分は治せないが、他人は治すことができる能力。
緊急事態。応急処置。その言葉が今当てはまる。そして、助けられるのは、自分だけ。
「多分、あいつも、そう思ってたんだろうな」
療の声から、抑揚が消えていた。
布団を抱きしめ、自分を抱きしめ、潰すように、絞り出すように。
「ぼくは、助けなかった」
だって、言っちゃったんだもん。
あいつを見て、ぐしゃぐしゃになったあいつを見て。
「気持ち悪い」
見て、思ったことは、それだけだった。
助けようとか、思っていなかった。頭の中になかった。
治癒能力者なのに、助けることが仕事なのに。
目の前のけが人を見て、抱いた感情は、嫌悪感。
最初のコメントを投稿しよう!