2232人が本棚に入れています
本棚に追加
「……たまにさ、夢に出るんだよ」
「……愛刀 夢追がか?」
「うん。そんで、自分に腹が立つ。夢の中のあいつはさ、ぼくを許すんだ。別に気にしてないって、笑うんだ。どんだけぼくってお気楽なんだろうね、どんだけ勝手なんだろうね、勝手に殺しておいて、そのくせ夢で愛刀を登場させて自分を許してる。最低だよ。最悪だよ。救いようがないよ」
なんて声をかけたらいいだろう。かける言葉を探していると、また家が揺れた。さっきよりも強い揺れだった。「な」なんですか? そういいかけて、遮られた。
「だいじょうぶだよ、大家さん。ちゃんとわかってる」
療が天井を見上げる。
「ぼくは生きるよ。壊れないよ。だいじょうぶだよ。愛ちゃんにはこれ以上迷惑をかけないよ。いい子でいるよ。”落ちた”まま、ヒトになるよ。歳星 療でいるよ」
歳星 療。確か、偽名だったか。愛が名付けてくれたという、”歳星”。
その意味を知っているのだろうか。
「ゴホッ……。大輔、なんだか話し疲れちゃった。寝ていい?」
「え? あ、ああ。わかった。俺、部屋を出るから。ゆっくり寝てろ」
「うん。おやすみ」
この部屋の主人なのに、追い出される。いや、追い出されてなどいないのだが、いちゃいけない気がした。
最初のコメントを投稿しよう!