2232人が本棚に入れています
本棚に追加
ノブの手をかけ、ひねる。カチャンと外れた音を聞いて、そのままの体勢で、訊いてみた。
「なあ、療。最後にいいか?」
「なに」
「お前の歳星って、愛がつけたんだよな」
「そうだよ」
「その意味って、お前知ってるか?」
「意味?」
一度咳をして。
「そんなのわからないよ。再生にかけたんじゃないの? 自分でいうのもなんだけど、愛ちゃんがこの名前をくれた時、酷かったからぼく自身の再生もひっくるめて、この名前をくれたんだよ」
歳星。サイセイ。再生。
「療。誕生日覚えてるか? ほら、お前の誕生日に俺が魔術で宇宙を作ったやつ」
「覚えてるけど……だからなに?」
「そのときにさ。見つけたんだよ」
宇宙を詠むためにイメージ作りのために買った本。その中に、あったのだ。
歳星。その名前が。
「歳星。それって、星の名前なんだよな」
太陽系5番目の惑星。その大きさは太陽系の中で最大。名前は。
「木星」
「…………」
「木星が意味するものをしってるか?」
「……なに」
「幸運だよ」
ドアを開ける。療はなにも言って来なかった。だから、最後に、言い残した。
「愛は、いったいなにを思って、お前にこの名前をつけたんだろうな」
最初のコメントを投稿しよう!