way of life―seventh―

25/27
前へ
/246ページ
次へ
「知るってことは重要よ。全ての始まり。最初になにかを知って、それからなにかが生まれる。もし大輔が療のことを知らなければ、なにも生まれなかった。幽霊なんて言葉を知らなければ、きっと幽霊になんて会わない。そういう意味よ」 「……よく、わかんねえよ」 わからない。桜の言いたいことが、なにもわからない。そもそも頭が働いていなかった。ショックが大きすぎるのだ。一度にたくさんの情報が入ってきて、うまく処理できていない。 エラーを起こし続けている。 「……本当は、あの子だけでも先に送ってあげたいんだけど」 独り言のように、桜は言った。 「でも、多分それじゃなんの解決にもならないのよね。療にとっても、あの子にとっても。それに、もし私が無理やり引き剥がしたら、きっとまたどんな手段を使ってでも戻ってくる。それこそ、幽霊なんて可愛いものじゃなくて、もっと、ダメなものに」 ダメなもの。それは最低の意味じゃないんだろう。最悪にダメなもの。桜の頭には、なにが浮かんでいるのだろうか。 「療は療で自分を責め続けるしね。幽霊にまでなって心配してくれてる人がいるのに、夢に出てきてくれるのに、信じないんだもん」 「ーーそれって」 療が言っていた夢に愛刀 夢追が出てきて、療を許しているってのは、真実なのか? 都合のいい解釈じゃなくて、勝手な妄想でもなくて。 「言わなきゃ」 「やめたほうがいいわよ」 「でも! それじゃあいつが……あいつらがかわいそうだろ」 「無理。きっと、大輔の言うことも、療は信じない。だって、大輔は知っちゃたから」 愛刀 夢追のことを、知ってしまったから。 「今なにを言っても、それは同情にしか聞こえない。優しさとしか思われない。いくらそれが真実でも、そこに真実味がない。だって、療は信じてないもの。信じようと思ってないもの。大輔がもっと前に気付いて、療に話していたら変わっていたかもしれないけど、まあ、無理な話よね。知らないと視えないんだから」 「桜は……言わなかったのか?」 「なにを?」 「療に……真実を」 「言った」 答えはたった一言だった。
/246ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2232人が本棚に入れています
本棚に追加