way of life―first―

4/29
前へ
/246ページ
次へ
太陽のような笑顔から目を教室に移せば、ブレザーの紺色が目に入ってくる。その中で多少は白シャツで動く影もあるが、それらは長袖だ。肌色は少ない。 「こんな寒くなるなら上着でも羽織ってくれば良かった」 「あはは」 「笑い事じゃないんだぞ、ほんとに寒い――」 「おーい、お前ら」 指をさして怒鳴ろうとした矢先、よく聞き慣れた声がそれを遮った。 今教室に入ってきたばかりの大村 司は鞄を置く前にどっかどっかと歩いてくる。 片手をあげるその腕は肌が肘まで見えている。ようやく見つけた半袖仲間だが、あまり嬉しくないのはなぜだろう。 「今日暇か? 放課後」 明徳と大輔が顔を見合わせる。首を動かしたのは明徳だった。大輔は首を動かさないながらも明徳を否定しない。 司は「良かった、じゃあさ」と言ってから鞄を漁り出す。 中から取り出したのは雨に濡れて湿ったチケットだった。二枚。一枚ずつ手渡されるそれは、招待券と書かれ、さらに大きく浮き輪の絵が描かれている。 「今日プール行かねえ?」 「……寒いのにねえ」 「……雨降ってるのになあ」  
/246ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2232人が本棚に入れています
本棚に追加