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太陽のような笑顔から目を教室に移せば、ブレザーの紺色が目に入ってくる。その中で多少は白シャツで動く影もあるが、それらは長袖だ。肌色は少ない。
「こんな寒くなるなら上着でも羽織ってくれば良かった」
「あはは」
「笑い事じゃないんだぞ、ほんとに寒い――」
「おーい、お前ら」
指をさして怒鳴ろうとした矢先、よく聞き慣れた声がそれを遮った。
今教室に入ってきたばかりの大村 司は鞄を置く前にどっかどっかと歩いてくる。
片手をあげるその腕は肌が肘まで見えている。ようやく見つけた半袖仲間だが、あまり嬉しくないのはなぜだろう。
「今日暇か? 放課後」
明徳と大輔が顔を見合わせる。首を動かしたのは明徳だった。大輔は首を動かさないながらも明徳を否定しない。
司は「良かった、じゃあさ」と言ってから鞄を漁り出す。
中から取り出したのは雨に濡れて湿ったチケットだった。二枚。一枚ずつ手渡されるそれは、招待券と書かれ、さらに大きく浮き輪の絵が描かれている。
「今日プール行かねえ?」
「……寒いのにねえ」
「……雨降ってるのになあ」
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