way of life―fourth―

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開きかけた療の口にかき氷を突っ込む。 咀嚼する療に、そっと耳打ちした。 「あとで療の部屋にもやってやるから、秘密にしてくれ、な? 全部屋はさすがに無理だし、疲れるし」 賄賂変わりにかき氷を一口プラス。療は大口を開けてそれを飲み込んだ。 よし、これで秘密は守られた。 大輔が内心でほくそ笑む。妄想の中でガッツポーズを天高く掲げた、ときだった。 ガンとバンの混ざったような音がして、大輔の部屋の扉が開かれる。 ドアの向こうに仁王立ちしていた少女は、この世のものとは思えないほど美しかった。いつもは冷たい雰囲気を纏っていたはず少女は今、真っ赤に燃えたぎるオーラを背中にしょっている。療よりも遥かに効果的な怒りの出し方を心得ていた。 「へぇ……魔術師ってそういうこともできるんだ」 少女はうつむいたまま、ぼそりとつぶやいた。 「今までそれを隠していたってわけね、ふーん」 隠してたわけじゃない。大輔の思いは口に出せなかった。 変わりに別の言葉が口に出る。 「どうやって知ったのかな? 桜」 百鬼 桜は微笑を浮かべながら答えた。 「この家はね、秘密ができないようになってるの。常に監視体制にあるのよ」 あ、と大輔が天井を見上げる。忘れていたわけじゃない。ただ、過信していただけだ。大家さんなら見逃してくれると。 「大家さん!」 《すまん、大輔。だが、しかたかったのだ》 しかたかった? 桜に脅されでもしたのだろうか。 《我はな、どうしようもなく退屈だったのだ》 「つまりは暇つぶしのために俺を売ったんですね」 大家さんは答えない。 ゾクリと背筋が凍えたかと思うと、桜がすぐ近くに立っていた。さっきまで療がいたはずと思いきや、療は部屋の隅でガタガタと震えている。 「えっと、桜」 「なによ」 大輔は迷っていた。どちらの言葉をかけるかで悩んだ。頭の中にある選択肢は2つ。どちらの言葉にするかで、桜の対応が変わるはずだ。 大輔は慎重に言葉を選び、実行した。 かき氷を崩し、 「ほら、あーん」 桜の視線がギロリと大輔を射抜く。 どうやら選択を間違ったらしい。 やはりもう片方の『ドアを開けるときはノックしような』にするべきだったか。 後悔しても、もう遅かった。
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