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三発殴られた。
「……で、お前たちの要求はなんだ」
叩かれた場所をさすりながら大輔が前にいるチビーズを見下ろす。この部屋の主である大輔はベッドに腰掛けていたが、来客の二人は床に直に座っていた。座布団なんて気が利いたものはなかったし、椅子は一つしかない。桜が座るかと思ったが、桜は療の隣に座った。
「話しだけは聞いてやろうじゃないか」
枕に肘を付き、空になったかき氷の容器とスプーンをゴミ箱に投げ入れる。
「へ―。ずいぶん偉そうな態度じゃない」
暴力で若干すっきりした桜が言った。
腕を組み、ふふんと鼻を鳴らす。服装は珍しくいつもみたいなワンピースではなかった。あのほうが涼しいのではと思ったが、ワンピースなど着たことない大輔は詳しいことはわからない。
「よく考えてみろよ、桜。お前たちの要求を叶えるのは俺だぞ。どうするかは俺次第。そりゃあ偉くもなるさ」
「単純に部屋を交換。もしくは占拠って手段もあるのよ」
「う…………」
交換はまだしも占拠はまずい。交換ならその部屋にも同じ魔術を施せばいいだけだが、占拠されたらどうにもならない。
第一、このうるさい二人を部屋に飼いたくない。
大輔の鼻が動いたのを見たのか、桜は調子にのるままに言葉を次ぐ。
「もし交換となったら、それはもちろん療の部屋とね。女の子の部屋と交換するわけにはいかないもん。それで、もし療の部屋と交換となったら、あんた地獄よ。
なんたって、ゴキブリが暮らす部屋だから」
「ぐ……。なんて卑怯な……」
「桜ちゃん、その地獄に住んでる人が隣にいるんだよ。それと大輔、ぼくの部屋と交換が奥歯を鳴らすほど嫌なの?」
当たり前だ。
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