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きちんと何分かと口にしないことで、大輔にすら制限時間を制御できないことを悟ったのだろう。桜はため息を吐いた。
「じゃあ一日中快適は無理なのね」
「無理。諦めてくれ。
そうだな、効果的な使用方法は、住人全員がリビングに集まって、そこで魔術を使えば一日中快適だな。それで、寝るときに各部屋に魔術使用で快適な睡眠を、ぐらいかな。
朝起きるまでずっと魔術が持つとは思えないが、寝付くまでならなんとかなるだろ」
そうなれば詠の回数もぐっと減り、大輔も万々歳だ。リビングと自室とでは広さが違うが、流れを拡大するぐらいなら大した手間ではない。
「それじゃあ意味ないじゃない。部屋で快適に過ごしたいのよ、私は」
「て言われもな。各々で頑張ってもらうしかない。扇風機とかないのか?」
「あったら大輔に頼んでないわよ」
桜の言うことはもっともだ。部屋に扇風機一つあればなんとかなる。
だが、最下荘に扇風機は一台しかない。しかもそれはリビングに置かれている。
「大輔は魔術で扇風機作れないの?」
「療、無茶言うな。団扇や扇子ならなんとかなるが、あんな複雑なもんどうやればいいんだ」
団扇や扇子ならあるぞ、と大輔が魔術ではない本物を桜に渡す。学校帰りに配っていた広告が入った無料の団扇と、安物の扇子。桜は片手に一つずつ持って、上目遣いで大輔を見た。
「団扇や扇子でどうしろって言うのよ。もっと簡単に涼みたいの」
「わがままなお姫様だな」
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