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「団扇もダメ、扇子もダメ。大輔にはセンスがない。ということは、残る手段はあと一つね」
「ひとつ?」
療が首を傾げる。追い討ちをかけられた大輔はベッドの上で倒れていた。掛け布団を細長く丸め、抱き枕のように抱いている。
「まだあるの? 桜ちゃん」
「簡単なことよ。無いなら作ればいいの。自作扇風機」
「自作扇風機って……。
大輔は無理って言ってるし、ぼくたちじゃ扇風機なんて作る技術は持ち合わせてないよ」
療の落胆した声を聞いても桜の自信は揺らがない。
「そんな複雑なものじゃなくていいの。簡単に考えれば、ただ風を起こせばいいんだから。足で漕いで団扇を動かすようにしたって立派な扇風機だわ」
「それは扇風“機”なの? というか足を使うなら手を使ったってなにも変わらないんじゃ……」
「ほら大輔。いつまで拗ねてんの。仕事よ仕事、今から言うものを出して」
桜が大輔の足をバシバシと叩く。もぞもぞと動いたかと思ったら、首だけを桜に向けた。
「桜、魔術師は便利屋じゃないんだぞ」
「聞こえてたの。なら話しは早いわ。今から設計図書くから、それを出して」
「設計図って、お前そんなのかけるのか?」
「前に日曜大工を趣味にしようと思って勉強したことがあるから平気」
ああ、そうか、と大輔が思い出す。こいつはそういうやつだった。
「……にしても桜。お前楽しそうだな」
「こういうのって血脇肉踊らない?」
「躍らん」
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