way of life―fourth―

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ガタガタと絶えず音がする部屋の向かい。そこではカチャカチャという小さな音が響いていた。 パソコンの前に座る彼女は画面に集中し、周りの音どころは室温さえ気にならない様子だった。 ブラインドタッチで動く指が一休みしたときを見計らって、大家さんが声をかける。 《大輔の部屋でなかなか面白いことをやっているぞ》 「………面白いことですか?」 《あまりに暇だったのでな、桜をけしかけてみたのだが、あの3人が集まると見てて飽きない》 3人とは大輔と桜と療のことだろう。彼の部屋に集まるとなるとその3人しか思いつかない。 それに、その3人なら面白いことになったと言われても不思議なこととは思わなかった。 《零も混ざったらどうだ》 諸星 零の返答は早かった。 「遠慮します。私がいるとあの死神さんの目が冷ややかなものになるので。まだ執筆の途中ですし」 《今日は乗っているようだな》 「書きたいことを書いているからでしょうか。今ちょうど大切な部分を書いているので。 ………それはそうと、彼らはなにをしているのですか」 《扇風機を作っているらしい》 一瞬耳を疑った。 「………扇風機とはあの扇風機でしょうか」 《もちろん違う。電気じゃなくて手動で動かすようだな。今大輔が材料を出している》 「手動? 扇風機を自作?」 《最近暑さが厳しいからな。その対策として作るらしい》 「………そうですか」 《どうした?》 「いえ……。そういう経験があってもいいかなと。 ですが、そうですね、大家さん。伝言を頼んでも良いですか?」 《伝言? 誰にだ》 「あの3人に。携帯を見て見ろとだけ伝えてください」 《わかった。伝えておく》 大家さんとの会話が終わり、執筆を再開しようと伸びをしたとき、「できた―!」というかすかな声と拍手が壁を越して聞こえてきた。 「………遅かったですかね」  
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