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部屋の中は興奮に満ち溢れていた。
3人ともみな汗を垂らし、けれどそれを不快に思うことなく清々しい顔をしている。真ん中にあるのはお手製の送風機。腰の高さほどある紺色のものだ。
足元に自転車のようなペダルがついており、それを漕ぐと歯車につけられたチェーンが回って上に着いた歯車を動かす。その歯車の回転で羽を回すという代物だ。
下の歯車を大きく、上を小さくすることで効率を良くし、強い風を生成できる。
《なかなかの出来じゃないか》
大家さんが言った。
3人はニタリと大きく笑い、それから口々に苦労した点や工夫した点を語り出す。同時にしゃべっているためなにを言っているかわからなかったが、とても楽しそうだったので大家さんは相槌を打っていた。
やがて、興奮覚めやらぬ療が言う。
「ねえ、さっそく使ってみようよ!」
「そうね、じゃあ大輔からどうぞ!!」
「お、いいのか? 俺からでいいのか」
「その変わり次は私よ」
「OK! その次は療だな」
「うん!!」
少年少女のキラキラ輝く姿を見るのはなんっ気持ちいいことだ。大家さんはしみじみそんなことを思う。
……はて、なにか頼まれたような。
大家さんが思考をまとめる間、大輔がはやる気持ちを抑えてベッドに座った。
羽根の高さから見て座って使うようだ。
なんだか自転車発電を思い出す。発電した電気で扇風機を回すのではなく、その過程を見事にすっ飛ばした実に合理的な代物だと大家さんは思う。
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