猫の住むホテル

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俺はとりあえず風呂に入る事にした。浴槽に浸かり上を見上げた。そこには天窓があり星空が見えた。 『ここは何もないが星だけは綺麗だな…。』 あまりに綺麗すぎてずっと見ていた。するとどこかで話し声が聞こえて来た。 《どうする?》 《どうするって?》 《どうやって料理する?》 《料理するって?食べるのか?》 《ああ、食べるよ》 《だが、まずそうだぞ》 《めったにない食材だからな》 《そうだな》 《そうだよ》 そんな会話が微かだが聞こえて来た。 『何の話だ?食材の事言っていたから夕飯の話かな?』 俺はその時まではまだ、ホテルの不思議に何も気づいてなかった。それどころか、呑気に風呂に入り1日の疲れをとっていた。そしてさっきの声がまた聞こえて来た。 《さっきのは焼いたから今度は揚げようか?》 《その前に揚げたじゃないか》 《ならば、生でそのままっていうのは?》 《それなら、その前にやったじゃないか》 《ならば、ちょうどお湯があるから煮込もうか?》 《それなら、良いかもしれないな》 《ならば、そうしよう》 《そうしよう》 話し合いが終わったのかその声が聞こえなくなり遠ざかる音がした。 『何を料理するんだろう?』 グゥ~ お腹が鳴った。 『そう言えば何も食べて無かった。どうしようかな?とりあえず上がって聞いてみよう。』 俺は風呂を出ると部屋にある電話からフロントにかけてみた。しかし、コールはするが誰も出なかった。 『何で誰も出ないんだ?』 受話器を見つめながらそっと置いた。しばらく考えて下に降りる事にした。 ガチャ コツコツ… 俺は部屋から出ると下へと降りようとした。下を見るとフードを被った者達が慌ただしく走り回っていた。 『どうしたんだろう?やけに慌ただしいな。』 俺は下に降りると目の前を走っている者を呼び止めた。だが、聞こえていないのか通り過ぎて行った。また、違う者が近づいてきたから呼び止めた。 『あの~?』 やっぱり通り過ぎて行く。 『どうしたんだろう?』 またまた近づいてきたので今度は捕まえた。 ギャー フードを被った者達が一斉に止まった。捕まえたフードを被った者が睨んだように見えた。フードの陰から大きな口も見えた。俺は思わず手を放した。 『私達は今料理中で忙しいのです。後でお呼びしますからお部屋で待っていて下さい。』
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