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そう言うとまた、忙しそうに走って行った。そう言われると何を料理しているか気になるのが常だ。俺は調理場らしき所を探した。階段の奥の方にそれらしき扉があった。その扉には小さな円形の窓があった。俺はそっと中の様子を覗いてみた。フードを被った者達が慌ただしく走り回っている。中央には大きな鍋が火にかけられグツグツと音がしていた。
『良く見えないな…。』
思わず力が入った。扉がすーっと開いた。躓くように中に入った。だが、フードを被った者達は誰も気づいていなかった。だから、俺はそっと鍋に近づいた。中を覗いてみると何も入って無かった。
『何だ…何も入ってないじゃないか…。』
鍋の中はただ、グツグツと湯が沸いているだけだった。周りを見ると色んな料理があった。先ほど話していた物のようが、何の食材かは分からなかった。すると辺りが騒がしくなった。
『獲物が逃げたぞ。どこにもいないぞ。』
思わず近くの扉の中に入った。丸い窓から厨房を覗いた。フードを被った者達が走り回っている。
『料理の食材が逃げたのかな?』
フッと後ろを振り返ると真っ暗で何も見えなかった。
『ここは何の部屋なんだ?スイッチないかな…。』
壁らしき所を触りながら探してみた。
すると何かが手に当たった。
『これかな?』
パチッ
スイッチらしき物が音を立て明かりが付いた。間違いなくそれは電灯のスイッチだった。すると走り回っていたフードを被った者達が一斉に止まった。そしてこちらをジッと見た。
『ヤバい。こっちに来るぞ。』
部屋の隅に隠れる場所を探した。そこに大きな扉の冷蔵庫があった。
『やもえないな。ここに隠れよう。』
俺はその中に隠れた。外では、中に入って来る音がしていた。
《何故明かりがついた?》
《誰かが居るのじゃないか?》
《ならば、どこに居る?》
《探してみないとわからない》
《ならば、探してみよう》
《そうしよう》
部屋の中を探している音がした。
ガチャガチャ
バターン
ガチャガチャ
バターン
どんどんこちらに近づいて来る。
『おいおい、こっちに近づいて来ているぞ。』
そしてとうとう俺の扉の前に来たようだった。
『ヤバい。見つかる。』
そう言った瞬間、叫び声が聞こえた。
《おーい、こっちに居たぞ》
探していた逃げた獲物が見つかったようだった。扉の前から去って行く音がした。
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