Project1 オペレーション-少女育成計画-

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Project1 オペレーション-少女育成計画-

――――パニック。 自然界のフィールドでは、敵を撹乱するための防衛本能だが、このコンクリートの人為的なジャングルでは、ただ 混乱を呼び込むだけのものだった。 まず、視界に入ったのは――――赤。 その赤が血の色だと気付いたとき、すでに周囲はパニックに陥っており、次々に悲鳴が聞こえてきた。 突然の出来事に恐慌をきたして、逃走する群衆。 恐怖が恐怖を呼び、ただ逃げ惑う人間の姿は、暴走するレミングの群れのようだった。 人波の狭間から、道路に倒れている人間が見えた。 灰色のアスファルトに垂れ流された血は、タールのように濁っている。 六道 骸は、そんな混乱の中、ただ立ち尽くしていた。 状況が全く分からない。 どれだけの死傷者がいるのか、どう行動すればいいのか。 ただ、思った。 この光景を以前見たような気がする、と。 それは、強烈な頭の痛みを伴う既視感だった。 非日常の光景に、体は拒絶反応し始めていた。 精神を保護しようと、シャッターを下ろすように情報を遮断する。 視界がチカチカと乱れ、周囲の悲鳴は途切れ始め、血の匂いも、夏の暑さも感じられなくなった。 そんな骸に向かって、歩いてくる人影があった。 黒っぽい衣装に身を包んだその女は、血まみれだった。 頬や口元には血がこびりつき、スカートやシャツはざっくりと裂けている。 だらだらと血が流れ落ちる右手には、歪にひしゃげたトランクが握られていた。 彼女は、怪我した足を引き摺るようにして骸の前に立ち、そして言った。 「このトランクを持って、逃げてください」 .
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