産声

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『もうそろそろよさそうだから、日曜迎えにいくよ。』 ビー君からの電話だった。 一ヶ月経ってまもなくのことだった。 もう帰ってこいと!? 『まだ長時間車で移動させるのは怖いよ。』 ビー君は 『うぅ。そっかぁ。』 と次の言葉がでてこなかった。 とりあえずは、ホッ。 はじめての育児で、 しかもあっちに戻ったら すべて一人でしなくてはいけない。 今はまだ、 食事もまともに 作れるかすら不安だ。 いずれはしなくてはいけないが、できるだけまだ生活リズムをつかむまでは実家にいたかった。 『じゃあいつならいいの?』 ビー君が 少し怒ったように聞いた。 『そっちである、町の訪問検診があるまでには帰るよ。』 ビー君の町では 産まれた子どもの検診に、 わざわざ町の保育士が自宅にまわってきて成長を測ってくれる。 『わかった。じゃ来週ね。』 そういって切られた。 だから、勝手に決めないでよ… そんなに家政婦が必要なのかしら。 単に寂しいから帰ってきて欲しいとか、そういうのも嫌だが、 ビー君の言い方は、 洗濯や掃除を一人でしているから、いい加減きついと言っていた。 単に家政婦が欲しいだけさ! 子供の様子はとりあえず伺ってみても、 ちっとも子供想いではない。 また胸がモヤけだした。
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