環 境

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黒のアベニール。 若い男の子が一人降りてきた。 ぶすくれたその顔は正直むかついた。 『お前か?この車あおったやんな??』 ビィ君が車を指差していった。 『…すいませんでした!』 最初の態度とはうってかわって、いきなり男の子は土下座した。 『すいませんじゃなかろーがぁあ!!』 ビー君ゎ男の子の腹を思いきり蹴りあげた。 『お前反省しとんのか!』 続けて顔を数発殴る。 ブルブルと震える男の子がかわいそくなって止めに入った。 『ちゃんと出てきたんだから、そこまでしなくていいやん。』 ハッとビィ君がこっちを見て、 『そうやん!お前こいつの腹に子供おるんよ!もし何かあったらどう責任とるんか?』 男の子の顔は暗闇でも真っ青に血の気がひいていたのがわかった。 『慰謝料払えや。財布出せこら。』 たかりやのようにビー君はいった。 ビィ君が勝手に財布を奪って友達と中身を見ている隙に、男の子に近寄って声をかけた。 『大丈夫?』 うつ向いたまま返事はない。 『あたしが運転はしてたんだけど、気付いてた?』 『……』 ピクリとも動かない。 『お腹に子供がいるのは本当なの。だからあたしも許せないキモチだったんだけどね…』 えっ?と一瞬顔の表情がうかがえた。 『まさかとは思うけど。流産とかになったらそれなりにしてもらわなきゃいけない。』 『はい…』 泣きそうに男の子が声を出した。 『だから誓約書がわりに名前と連絡先は残して欲しいの。あと赤ちゃんもびっくりしてるから、謝ってね。』 『本当にすみませんでした!友達だと思ってつい…!』 可哀想だったけど本当に誓約書はかいてもらった。 でも半分はビィ君が酔っぱらって叫んだりしなければ…というキモチの苛立ちの方が強かった。
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