産声

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「わぁなにあれ汚いねぇ・・」 分娩時間3時間58分 3月の暮れ。 3回目の陣痛誘発を経て、 私の第一子が誕生した。 2620グラムで誕生したこの子は新生児感染症ということで、 すぐにNICUに運ばれ、 離れ離れになった。 予定日を12日も超過して誕生したので、羊水の濁りで皮膚にかさぶたみたいな皮がへばりついていた。 産科病棟の正反対に位置する NICUには、保育器にはいった新生児をずらりと並べ、 それは最初に見たときは みせもの小屋のように思えた。 産後2時間で、 私は廊下をはいつくばって、 わが子を目の前で見ることができた。 「ありがとう。生まれてきてくれて、ありがとう・・・。」 涙がでた。 その横で、 はるばる2時間かけて来院してきたお義母さんは、 そういったのだ。 「汚い」 私の両親も周りに居た席で。 「あとからちゃんと拭いてくれるように、いっとかなきゃいけないよ!」 そういわれて、悔しかった。 「お姉ちゃんの病院はすぐにふいてくれたのにねぇ・・」 結局比べるのはいつもお義姉さんの子。 どうしてこの子をみてくれないの? どうしてこの子をかわいいといってくれないの? 消毒を何回もしてから、 無菌室のNICUの中に入り、わが子に触れた。 「あったかい・・生きてる・・」 沢山のコードをつけられて、 痛々しいその姿に加え、 さっきの姑の言葉・・・ 涙すら出なかった。image=443738552.jpg
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