産声

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いよいよ、待ちに待った子供が産まれた。 これでわたしも、一人前だろう。 今まで、これみよがしに来ていたお義姉さんも、気をきかせて出入は少なくなるだろう‥ むしろ そうあってほしい。 産後、 数時間しかたってないが 私はそんなことを考えていた。 本当につまらない考えだった。 子供という存在(モノ)に 依存し、期待し‥ プライドまでつくってしまう。 ただお義母さんの‥あの言葉や表情には、 嬉しさのようなものはあまりかんじられなかった。 「よかったらつかって。」 お義母さんからおもむろに 渡された袋の中には、 5万円はいっていた。 「お祝い。」 なんだこれ他人行儀な‥ 私はお金を貰うより、 一度でもいいからお義母さんと、 赤ちゃん用品の買いにものに一緒にいきたかった。 それすら、わかってもらえないのだ。 そのめんどくさい事の代償に、 お金を渡せばいいと思っているんだから。 「早くかえってくるといいわね。」 そういってビー君と 義父とともにかえっていった。 家族がふえ、 新たな絆となるものだと 信じていたが ますます私とあの子だけ 疎外されているような 気持ちになった。 たまらずに、 私は一日に何度も子供のもとへ足を運び、 自分の存在価値を確かめた。 「この子がいるから大丈夫。この子がいるから、ひとりじゃないんだ。」 しかし、NICUに入っているため、厳重な管理がされている。 直接母乳はあげられない。 抱くこともできない。 心拍と血圧を測定する機器は常に子供の体に巻き付いている。 時間ごとに決められた値のミルクしかもらえず、ひもじくてあの箱のなかで泣きじゃくるのだ。 感情が高ぶりすぎている私には胸が痛かった。
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