鬱-ウツ-

10/11
前へ
/87ページ
次へ
『そのへんで寝とけ寝とけ!』 あごで促されたのは、 土間の吹きさらしの板だった。 黙っていると、 ビー君なりの配慮か次には、 『それか、先に帰って寝とけよ。帰りは電話するから、迎えに来てくれたらいいし。』 意味がわからんよ… こんな切羽詰まるほど、 具合悪いっていってんじゃんよ? 度合い位わかるだろーが。 どうして、 どの口からそんな言葉が出たのかわからない。 『帰って…ここへまた迎えにくるの?』 『当たり前やろ?アシないんだから。飲んでるし~』 『そんなの逆にきついから…待ってるよ。』 『いいとや?何時になるかわからんぞ?』 といってまた後ろを向き直り、 麻雀を始めた。 周りの友達の一人は、 二人の会話のニュアンスで何か気付いてくれたのか、 座布団とひざ掛けをもってきてくれた。 『ああ、そんなしなくていいのに悪いな。』 愛想よくビー君は 友達に礼をいった。 『大丈夫?』 の気遣いもなく、 そのまま四時間近く 板張りの床で待った。 友達もいるなかで、 『お前の嫁は付き合いも悪いな』とか言われたくなかったし、 世間体というのを 田舎は特に気にしたから、 それに合わせなければいけないと我慢したのかも。 ビー君の 帰りには当然、 お酒も入っていたし どんどんと席は ヒートアップしていき、 ろれつもまわらないほど ベロベロに酔っ払っていた。 半分抱えて、 自宅に帰った。
/87ページ

最初のコメントを投稿しよう!

141人が本棚に入れています
本棚に追加