産声

6/11
前へ
/87ページ
次へ
赤ちゃんよりも、 私が先に退院となった。 赤ちゃんと暫くは離れ離れ。 NICUの後ろの方には、 箱から出された赤ちゃんのゆりかごがならぶ。 そこに並ぶのは退院する二日前の状態なんだという。 まだ箱にはいったままのわが子はまだその時期ではないんだと悲しくなったものだ。 それでも、お昼の一回だけは直に母乳を与える事が出来るまでになった。 しっかりと吸い付き一生懸命にしがみつくわが子をみて、ほんとに安心できた。 「ああ。あたしこのこの母親になったんだ。」 居場所ができた。 あたしの存在価値ができた。 救われる。 ビー君は休みの日でも 毎回はみにきてくれなかった。 仕事がたてこんでいたのか、 まぁ遊びにはまっていたのか。。。 どうでもよかった。 苛立ちとかとっくに越えていたから。 『産後は安静にしときなさい』 と実家のママはやさしかった。 あたしの大好きなママの作るオムライスはもう何回もつくってもらった。 『こんなママになりたいなぁ。』 母性本能がバリバリと出てくる産後期。 感情が豊かになるのか、 何にでも感動してすぐ泣く状態だった。 毎日の日課として、母乳を家で搾乳し、冷凍した物を病院へ運んだ。 少しでも自分の、看護士が口を揃えて母乳が一番いいというので大きな保冷バックを担いでいった。 私が先に退院してから、 三日後にそうやっていくと、 わが子は箱からでてゆりかごにいた。 『もしかして、もう退院できそうなんですか??』 嬉しくて看護士にいった。 『えぇ。よかったわね。明日まで外にならしてみて、異常がなかったら退院みたいよ。こんなにかわいい子がいなくなるのは、さみしいわね。』 そういってもらえて、 もうたまらなく嬉しかった。
/87ページ

最初のコメントを投稿しよう!

141人が本棚に入れています
本棚に追加