貴女との日常

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 『おはよう』  今日もきてた。  貴女からのメール。  僕の1日は貴女からのメールで始まる。  僕は『返信』というボタンを押そうとしたが、やめた。  貴女は今頃会社の建物の中だろう。  年上の部下がいて困る、という話を聞いたことがある。  メールを受信した時刻を見てみると『4:32』。  今の時刻は6時。  返信しても返事は帰ってこないだろうと判断し、携帯の画面を待ち受けに戻した。  僕は目は覚めていたがまだベッドの中にいた。  寒くてベッドから出たく無かったからだ。  それと、貴女に逢いたくなって、とても切なくなったからだった。  逢えないのは分かってるはずなのに。  でもいい加減起きないと会社に遅れてしまう。  冷たそうなフローリングにそろそろとつま先をつけた。  やっぱり冷たかった。  ホットカーペットでも買うかな、と思いながらワンルームの部屋を移動した。  いかにも1人暮らしです、みたいな冷蔵庫を開けた。  その中からペットボトルの野菜ジュースを取り出した。  少し曇ったガラスのコップに野菜ジュースを注いだ。  しかし、ガラスのコップの半分くらいでペットボトルの中は空になってしまった。  「ちっ……」  僕は軽く舌打ちをした。  いつもより半分少ない野菜ジュースを身体に染み込ませた。  そして、スーツに着替えようとどこに脱いだっけ?と狭い部屋の中に視線を巡らせた。  ベッドの脇に無造作に置かれたスーツを発見した。  こんなとき貴女がここにいたら、  「ダメじゃん。しわになっちゃうよ」  と言ってくれるのだろうな。  ふと、正気に戻った。  自分が気づかないうちににやけていた。  妄想でにやけるとは情けない。  気を改めてスーツを手に取った。  そして、バサバサと空気の力でスーツについたしわを伸ばそうと努力をした。  しかし、しわは綺麗に残ったままだった。  僕は諦めて、黄色がかったワイシャツを着て、シワシワなスーツを羽織った。  ヤバい。電車に乗り遅れる。  ちゃちゃっと歯磨きを済ませて、鞄を持ち、小走りで駅へと向かった。  
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