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好条件だった。 私にとってはまたとない条件だった。しかしここで安易に承諾するほど残念ながら私は楽観的に出来ていない。 「……他の」 「はい?」 首を傾げる彼。 疑問を抱くというより謎だらけといった表情をしていた。 「ほ、他の部員とか……いないんですか?」 「…………」 ……なんで沈黙なんだ!それとも私なんか変なこと言ったかな。 「……なんでそんなこと聞くの?」 私は目を大きく見開いて彼の顔をじっと見た。 彼は私の質問に対して心から疑問を感じているようだった。何を言ってるのか分からない、そんな表情。 「……あ、ごめん!」 誤った、我に返ったかのように。 そして頭をかきながら口を開いた。 「この部活さ、僕以外に部員いないんだよね。言わなかったっけ」 あ、と私はさっき彼が言ったことを思い出す。 ――部員が増えたのは僕以来初めてだなあ。 その言葉から察するに彼が入る前は休部に近い状態だったのだろう。 いや、彼が入る前は数人部員がいたのかも知れない。まあどちらにしろ、彼が今まで独りぼっちだったことには間違いはない。 と、私はまたある疑問を抱いた。 「……一人しかいなかったのに、活動停止とかにならないんですか?」 彼はまたどうして。さっきと同じ表情をした。 「科学部はこの学校に元々ある部活だからね、廃部とか休部とかにはならないらしいよ。まあ私立といっても中学だから、生徒が部活作れる訳じゃないんだけどね」 私は驚いた、ただ驚いた。彼は私が疑問にしていた答えを的確に教えてくれた。 「それにしてもよくそんなこと知ってるね、それも本の知識?」 彼は机の文庫本を見ながらそう言った。 私はなんだか無性に恥ずかしくなって、そして同時にやるせない思いでいっぱいになった。 私は小さく頷いた。注意して見ないと気付かないレベルの角度で。
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