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引き戸は思ったより滑りが悪くギシギシいいながら開いた。 顔を真っ赤にしながら扉を閉める私、こんな状態になるまで放置してる方もどうかと思う。 中を見渡した。左には移動教室によくある大きな机が縦三列、横三列に区切られ、机の下には四角い椅子が綺麗に仕舞われていた。 人はいなく、最前列の机の一番奥にはフラスコやガスバーナー、メスシリンダーなどが無造作に置かれていた。他にも色んな実験道具があったが名前が分からない。フラスコには緑の液体が入っており、メスシリンダーにも何か得体の知れない液体があった。 あいつがやったのかなぁ。 なんて、適当に考えながら近くの机の下から椅子を取り出して座った。 ……やばい、暇だ。何もすることがない、いやあるけど。入学早々、一回目の部活でこんなことをするのは何だか気が滅入る。 だけど他にすることもないし、仕方ない。私は鞄から文庫本を取り出した、カバーつきだ。 鞄といっても私立なので学校指定の鞄はない。どうせ私立に行くんだからということで、母が新しく買ってくれた。高校生がよく持っている感じのあの鞄だと思ってくれればいい。 私は少し気が早いと言った。中学とはいえほんの数日前は小学生だったのに。しかし案外周りが考えていることは同じらしく、クラスの半分は私と似たような鞄を持っていた。 私が文庫本をよみ始めたのはつい最近、ほんの数ヶ月前だ。 周りを避けてきた私は休み時間は殆どの時間、図書室にいた。私はそれから本が好きになった。本当の愛読家からしてみれば、私の動機は不純そのものだろう。 本は私の知らない物語を繋いでくれる。見たことのない世界へ連れてってくれる。 私を物語の主人公にしてくれるのだ。日々新しい世界へ。私はそれが好きなのだ。 お年玉だって殆ど本に使ってしまった。私はそのくらい本が好きになってしまった。 と、そんなことを色々考えながら本を読んでいると廊下から足音が聞こえた。 足音の先は理科室の隣、理科準備室へ消えていった。途中、理科室の磨り硝子に影を写しながら。 しかしその足音はすぐこちらに向かってくるのが分かった。教卓の左側、理科室と理科準備室を直接繋ぐ扉が勢いよく開いた。 短髪で顎に無精ひげを生やした白衣の男性がいた。 あぁ、分かった。多分科学部の顧問だ。このそこはかとなく伝わってくる変人オーラは、あのボサボサ眼鏡の男の人も出していたものと同じだ。
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