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科学部は変人しか集まらないのだろうか。 と、暫くの間私とその先生は見つめ合っていた。最初にアクションを起こしたのは私だった。 顔をトマトのように真っ赤にし、両手に持っていた文庫本を落とした。 「あっ」 声を出したのはその先生だった。 「えーっと……」 まず立場が逆だと思う。ここでたじろぎしたいのは私なんだけど。 まぁ、私も今かなり動揺してるけど。 「あいつもうすぐ来ると思うから、少し待ってな」 そう言いながらこっちへ向かってくる先生。私が落とした本を拾った。 「驚かせて悪かったな」 そう言いながら本を差し出す先生。落とした衝撃の所為なのか、隅っこが少し折れてしまった。 「……あの」 「あー悪い、新しく買おうか?」 そんな私の反応に、先生が気付いた。だけど私が言いたいのはそういうことではない。 「いえ!そういう訳じゃないんですけど……あの、怒ったり、しないんですか?」 一瞬の沈黙。 「……なんで?」 「だって、本読んでたし、こ、校則違反とかになるんじゃ――」 私がそう言った瞬間、先生はまず目を丸くし、その後声を大にして笑った。 しかも結構長い間。 「いやー君面白いこと言うなー、久々に笑ったよ」 少し涙目になる先生、どうやら本気の大爆笑だったらしい。 傍ら私は真っ赤にしていた顔を更に、限界まで赤く染め上げた。 「んな校則ねーよ、この学校はそこまで厳しくない。ま、これからよろしくな」 本を渡した先生はそう言いながら元来た扉から再び理科準備室へ戻った。 嵐が去った後みたいだ。少なくとも私はそう感じた。 持ってる本を見る。多少傷ついてしまったがまだ読める。 ページをめくる私、周りの人から見ればいつもの私となんら変わらないが、今の私は胸が躍る、とても楽しい気分だった。 「今日、初めて喋ったな」
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