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来ない人間など病人ぐらいしかいないので知らないなど有り得ない。
「どうかなさいましたか?」
「……いや、何も」
とはいったものの、気になる。靄がかかったかのように。
コイツは一体…
「フィンセント、どんぐり拾いに行こうぜ!」
「あ、そうだ! 行こうフィン兄ちゃん!」
「あ、えっ?」
半ば困惑するフィンセント。
そうだ、ということは忘れていたのだろうか?
「フィン兄ちゃん、袋持ってるだろ? くれっ!」
何故そう思ったかかなり疑問になったが、事実持っていた。超能力だろうか?考えにくいが。
カソックを引っ張られ、両手を暖かい小さな手達が掴む。振りほどく事など出来なかった。
「アンセルムさん、またねーー!」
まるで流されるように子供達に引っ張られてゆく。困惑と驚愕の声をあげながら拉致られていった。
「ああ、また、ね」
優しい声でアンセルムは手を振る。とても優しい人に見えた。
―――フィンセント・ファン・ウィズダム
「…!」
ふと、呼びかけられたような気がしてフィンセントは老人を見ようとした。が、
そこにはもう誰もいなかった。
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