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冷たい雨は止み闇が訪れた。
不気味という領域を超えた闇は邪気を漂わせる。
闇が蠢いた。
数多の生物、異次元生命体だ。死体の気配を察知してやってきたのだろう、美味なるものを食べるかの如く屍を食してゆく。
その牙は男の死体にも向けられようとしていた。
ワニのような顔に猫の胴体、背中には不釣り合いの羽を持つ異次元生物がその匂いを嗅ぐ。生命活動が静止していることを確認すると、一気にかぶりつこうとした、その時。
「やれやれ、こうもあっさり死んでしまうとはね」
異形の眼前に神父の指が掲げられた。指先に青白い魔方陣が発ち空間を歪ます。
風が凪ぐ音と共に、白銀の光が神父の指から発射。光線は眼球から脳に侵入し、脳を焼きながら貫通する。のたうち回ることを許さずに光の範囲が巨大化し、頭をことごとく焼尽くす
男はゆっくりと立ち上がった。そこにかつての傷はなく黒い闇が穴が開いていた腹部を補っている。
「・・・下等生物が、私を殺せる訳がない」
たが、それは全くの別人だった。人間という皮を被った化け物。そのままの意味!
「失せるがいい」
言葉が意味を成した。
蒼き閃光と共に全てがなぎ倒される。大地が抉らて空気中に塵となって広がった。光がその血肉一片まで昇華する。
光がおさまった時、存在していたのは男ただひとり、それ以外は死体を含め何一つ無くなっていた。
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