Ⅰ始まりの祝詞

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   子供達が悪魔と呼ばれるフィンセントを遊びに誘い始めたのは、あるミサの日からだった。      ミサという習慣がまだよく分からない子供達は途中でよく抜けだし教会の庭で遊んでいたのだ。が、そこでトラブルは起った。    子供の一人が転んでけがをしたのだ。膝や顔面が切れただけだった。しかし子供がパニックになるのには十分だった。殆ど知識のない幼い子供達には治療する方法が分からなかった。    その時、ミサに出ることのできないフィンセントが通りかかり、その子を手当てしたのだ。      悪魔と呼ばれているのは子供も十分知っている。だが分け隔てなく、まるで皆の兄のような接し方は子供達の心を掴んだ。    フィンセントにその気など皆無で彼にとって当然のことをしにすぎなかったが。   
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