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封筒には一切文字が書いていないのは明白だが、エルドは念入りに確認していた。
「僕のことはなんか言ってたかい?」
「ん? まあな……」
エルドは絶対に手紙のほうに注意が向いていて、ただ俺が今この場にいるから話を続かせようとしているように見える。
「僕は村を出る時に大喧嘩をしてね。出て以来、一度も帰ってないんだ。」
「喧嘩したのか…………。人間と共存出来ないことでか?」
「そうだ。……村の年寄りどもは頭が固くてね。説得にはすごく手間取ったんだよ。」
溜息を吐いて、過去の説得のことを思い出しているようだ。
「よく人間と共存しようと考えたな。全面戦争をしようとかは考えなかったのか?」
エルドは笑って首を振った。
「人口の差が大きいからな。仮に長寿で、特殊能力を持って高速移動で来ても多勢に無勢さ。今の魔物と人間みたいに。」
すげー説得力あるな。
人間は魔法を使えるが、突撃しか出来ない魔物におされてる。
「どう作戦を練っても人間には勝てなさそうだし、それなら共存するしかないからね。」
「作戦は練ったのかよ…………」
「勿論だ。じゃないと長老とかが納得してくれないしね。」
小人って結構恐ろしいな。
俺は今までエルドとしか交流がなかったから、エルドの性格がそのまま小人なのかと思ってた。
「元々僕は人間に興味があったから自ら人間側に出向くことにしたのさ。」
「因みにそれは何年前?」
「10年くらい前じゃないかな。」
…………10歳でそれを考えるとか、マジかよ。
俺は呆気に取られていた。
自分が10歳の時に何を考えていたのだろうか、とか思いながら。
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