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俺が家に転移して戻った時、ちょうど玄関にはアテナの姿があった。
これから出かけるのだろうか?
「アテナ。これからどっか出かけるのか?」
「ええ、少しね。絶対に外せない用事があるから今日は帰れないわね。」
「珍しいな。いつもは何も言わずに行くこともあるじゃんか。」
アテナの顔色はあまり良くない。
顔色というか表情が暗く、あまりこれからある用事はマイナスの物なのだろう。
神の生活にどんなことがあるのかわからないが、俺が想像もつかないものがあるはずだ。
「明日帰ってこれるのがわかってるから一応言っただけよ。深い意味を勘ぐる必要はないわ。」
アテナは長い髪を弄りながら答える。
腰まである髪の毛ってどうやって手入れするんだろうか。
ブラシとかで梳かしてるのかな。
「そうか。どんな用事かは知らないが、気を付けてな。」
「それはこっちの台詞よ。そろそろ動きにくくなってるはずだし、用心してよね。」
「わかってるよ。だから最近は寝る時も一応コートを着てるんだよ。」
念には念を入れといても大丈夫だ。
寝ぼけて外に出るとかはやめたいしな。
「じゃあ行ってくるわね。戸締りとか宜しくね。」
「どうせ転移するから扉とか……は鍵掛けっぱなしだから戸締りもないけどな。」
俺が言っている途中でアテナの姿が一瞬光る。
そして俺の言葉は独り言となってしまった。
いつもはそんなに言わないアテナの言葉。
それを確かに俺は疑問には思っていたが、思っただけで終わってしまっていた。
もし俺がアテナの言葉に警戒して、何らかのアクションを起こしていれば結果は違っていたかもしれない……
『もし』と言う言葉など全く意味もなく、ただただ後悔にしかならなかった……
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