1話

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幼稚園でのある日の事。 「ちえりっていっつもお迎えおばあちゃんなのか?」 私の実のおばあちゃんではないけれど… 「うっうん。」 言いたかった… 私には母も父もいないと廉人には… 言いたかった… でも言えなかった… 引かれるんじゃないか。 嫌われるんじゃないか。 そんなことを考えて勇気がでなかった… 「廉人はいつもお迎えお母さんだね。」 と言うと… 廉人は思いがけない言葉を口にした。 「うん!俺父ちゃんいないから!」 えっ!なんで!廉人… 驚いて思わず口が開く。 「父ちゃん病気で死んじゃって…」 少し寂しそうな顔をしていた。 「そうなんだ。」 気まずい空気が流れた…けど 「ま~俺にはお母さんがいるから!」 とびきりの笑顔で言う廉人の顔を見て思った… 廉人の今の笑顔は本当の笑顔じゃないよね。 でもこの頃の私にはささいな事しかできなくて… 「そっか!」 笑顔でこう言う事しかできなかった。
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