僕と彼女のはじまりの物語

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服が剥がされており、アレと思われる白いナニかが体についている…しかも夜の公園で。…というシチュエーションで何をしているんだ?というのもおかしいが、取り敢えず声をかけてみた。 「…私は何もしていない。されだけ。」 …その通りですけどっ! どうすりゃいい、気まずい。 「…そうか。とっ取り敢えずその…服を着たらどうだ?」 「上着はボタンが取れていてる、ズボンは大丈夫。でも、下着は破れて着れない。」 「取り敢えず上着、羽織れ。んでズボン履け。…それでいいんじゃね?」 「そうする」 無表情な彼女は立ち上がると、言葉通りに服を来ていく。 「…くさい」 だが髪や服にかかったその白い液体はどうしようもないらしかった 「ちょっと待ってろ」 「どうして?」 「…コンビニ行ってくる」 そう言って僕は近くのコンビニへ急ぐ。はっきり言って見ちゃいられない。 コンビニで御手拭きとタオルを買って公園に戻ると彼女はベンチに座っていた。 「早かった」 「走ったからな」 そう言って僕は買ってきた物を渡した。 それで彼女は顔や髪を拭いた。ずいぶんといい加減に… そして拭き終わるとその場は沈黙しかなかった。 「その…なんだ。災難と言うか…その…家まで送ろうか?」 沈黙に耐え兼ねて話しかけたがいいが、言葉が後に続かない。 「…家には帰りたくない…かも。」 少し雰囲気は和らいだ気はするけど…何故今和らいだ。 「そっそうか。あーなんでだ?」 軽はずみにそう言うと彼女は口を閉ざしてしまった。 「いや、その…悪い。無力にとは言わない。」 若干自己嫌悪。だって、彼女を今追い詰めているかもしれない。 「でも、その姿で帰らないでここにいるのは良くないぜ?」 だから偽善でも言っておこう。 こういうのは言った者勝ちだ。 「…そう、桜木君がそう言うなら…わかった。帰るね。」 少し悲しそうな、どんよりと曇った空のような目をした彼女は静かにそう言った。 「送っていこうか?」 「ううん。いいよ別に。遠くないし……一人でも帰れるから。」 一人 立ち上がった彼女。 その姿のなんと儚げなことか。 「僕、夜に散歩するの趣味なんだ。だから明日も来るから。」 気が付けばそんな事を言っていた 彼女は一度振り向いて、びっくりしたように目を開くと髪が顔を隠し、前を向いて一人家へと歩き出してしまった。 これが僕と彼女のはじまりの物語
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