テレビの消えた日

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「ふぅ」 手紙というものは何故だろうか、いつ書いても緊張してしまう。僕は一度書いた手紙をなるべく見直さないようにしている。正直、いつもの話し方と違う語りをしている自分が恥ずかしくて紙を破きかねない。と、いいますか、実際これで八枚目だったりするのは気にしない方向で行きたい。 「なあ、ちょっと切手取ってくれない?一番左上の引き出しにあるから」 「うん」 大した内容でもないのに、慣れない事をした僕の脳は疲れを覚えていた。文章を書くのは割かし好きではあるのだが、手紙って何だかこう・・・アレなのだ。  とりあえず慣れない事をしてだれている僕は、緊急事態でもないのに猫の手を借りたい気分だったのだ。というわけで、現在進行形で借りている。 うちの猫は「うん」と返事をする。っていうか、他の言葉もじゃんじゃん口にする。そもそも猫じゃなくて人だ。しかも比較的可愛い女の子だったりする。出会ったばかりの女の子と一緒に暮らしていると言ったらすっ飛んで来そうだったので、手紙では猫と表現を歪めたのだ。まあ、猫と形容する理由は他にもあるんだけど・・・  見えない誰かへの言い訳をしていると、先ほどまで引き出しをガサゴソやっていた少女が切手を一枚持って隣に座っていた。それを彼女の指からすっと抜き取る。 「サンキュー」 ペロッと・・・・・・ん?何かこれ・・・ 「もうなめてあるよ」 「早く言えよっ!?」 こういうことを普通にしてしまう子なので、こちらの心臓が持たない。きっと今、僕の顔は茹蛸のように真っ赤になっているのだろう。それを笑うでもなく不思議そうに首を傾げ見ている彼女が可愛い・・・じゃなかった、うらめしい。ちょっとまて、今のもしかして間接キs・・・いや、二人とも舐めたってことは舌&舌!?ってことは何だ、これは間接ディーp・・・・・・って僕は乙女か!?(←全世界の乙女に失礼)  考えていると既におかしい頭がどうにかなりそうだったので、僕は机に置きっ放しの財布を引っ掴むと早足に玄関へと向かった。
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