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「街に戻るには少し距離がある。今夜はこの近くにある宿をつかおう。今の時期使われていないが非常食くらいあるだろう
。馬には乗れるか?」
「子供の頃少し乗せて貰ったことあるけど、一人では……」
体を支えてもらいながらなんとか馬に乗り、後ろからダムに抱え込まれる形で馬が歩き出す。
「うわ…結構高いんだな……」
俺の体を挟んでいるダムの足をギュッと掴む。
「怖いか?心配するな、後ろからしっかり抱いている」
気恥ずかしくて言葉が出なくなってしまったが、背中から感じる体温が温かくて気持ちいいなんて思ってしまった。
宿につくとダムはテキパキと暖炉に火を焼べ、風呂の用意をしてくれた。
「真琴、風邪をひくといけない。直ぐに風呂で暖まってこい」
「えっ、ダムだってずぶ濡れじゃん!俺後でいいよ」
「……軍人を舐めるな、お前より丈夫に出来ている。」
そう言ったダムにタオルと、木彫りの鳥を手渡された。
「これは……?」
「今急いで作ったから形は悪いがちゃんと浮くはずだ」
形ぜんぜんわるくないから。小洒落たペンションにでも飾っていそうなカワイイ鳥さん。
「ってなんで?風呂に木彫りの鳥?」
「真琴の国では疲れている時は風呂に鳥の人形を浮かべるとアリスに聞いたんだが?早く疲れがとれるまじないだと……」
心なしか不安そうに言うダム。
アヒルさんのことか?あの黄色いやつ……?まじないってアリス、嘘吹き込むなよ。でも短時間でわざわざダムが作ってくれたと思うと愛しさからツッコム気にならず……ん?愛しさ……?こ、この鳥に対する愛着のことだろ!しっかりしろオレ!
「ありがとう」
おとなしく受け取った。
風呂場にある大鏡に自分の姿が映る。森を走っている最中ついた手足の傷
破かれたワンピースはあれが現実にあったことだと突き付ける。
改めて襲い掛かる恐怖心と不快感。悍ましい感触を消し去りたくて体をゴシゴシ擦り洗うがあの痣は消えない。
憂鬱な気分のまま湯舟につかるとダムお手製の鳥さんがプカプカと揺れている。
「ダム……ありがとう」
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