1996年4月8日

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葛西の底抜けに明るいテノールが部屋中に響きわたった。 「若槻主任。お願いしまーす」 入社五年目のベテラン女子職員である、坂上弘美が、一次チェックを済ませた入院給付金の支払い請求書類の束を机の上に置いた。 既にそれ以外にも種類ごとに色分けされた書類が机の上に山積みになっている。 満期保険金の支払い。生存給付金の支払い。年金の支払い。契約者貸付。解約。印鑑届。契約者や生年月日などの契約内容の訂正。保険証券の再発行など。 昔から人と紙だけで仕事をしていると言われる生命保険会社だけあって、書類の種類の多さも半端ではなかった。
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