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「もし保険証券をお持ちでしたら、そこに書かれている記号番号をおっしゃっていただければ、すぐにお調べできますが」
もう一度、言ってみる。しばらく間があってから女が言った。
「……そんなんなかったら、わかりませんの?」
「はい。お支払いできる場合と、できない場合とがございますので…」
「できない場合いうんは?」
「一応ですね、ご加入から一年間は、自殺は免責となっております」
「めんせき?」
「お支払い、できないということなんですが」
「なんでやの?」
「生命保険が自殺を助長するようなことがあってはならない、という趣旨で決められたことなんですが…」
女はまた黙り込んだ。
どうすべきだろうか。受話器を持った手が汗ばんできたのを感じる。相手が本気で自殺をしようと考えでいることに、もはや若槻は疑いを持たなかった。
もちろん、電話を切った直後に相手が窓から飛び降りたとしても、若槻には法的にも道義的にも何の責任もない。
だが、若槻は、このまま見過ごすことはできないと感じていた。
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