1996年4月8日

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「今日はまた、えらいぎょうさん死亡があるなぁ」 隣の席の葛西好夫副長が、机の上を見て声をかけた。 「春やというのに、気の毒なこっちゃ」 言われてみると、たしなに異常なくらい数が多かった。 統計的に言うと、人が死ぬのは冬である。体力の弱った老人や病人は寒さを乗り切れないことが多いからだ。 この季節にこれだけ死亡件数が多いのには、なにか理由があるはずである。 若槻は書類の束をめくってみた。
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