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課長の長い説教は、春喜の耳を右から左へ流れていた
(何で俺が怒られんだ 新人だからか?若いからか?顔が良いからか?ふざけんな 八つ当たりもいいところじゃねーか)
オフィスでは見ぬ振り聞かぬ振りで、(課長が悪いのに可哀想に岩瀬君…)と思いながら各自仕事をしている
やっと解放されたのは15分後
「よくもまぁ長々と同じことを喋り続けれるもんだよな 飽きただろ」
デスクに戻ると隣の席に遊びに来ている先輩がこそこそと春喜を労う
(飽きただろじゃねーよ フォローに来いよ アンタ今回の件の責任者だろ)
「真鍋さん、自分の席に戻ったほうが良いですよ 課長に言って置きましたから 真鍋さんに教えて貰ったんですって」
「えっ 俺は何も教えてねーだろっ」
「それも問題だぞ」
春喜の隣の席、友紘が真鍋に呆れる
「教えてやれよ 課長が出してきた資料間違ってるって気付いてたんだろ お前」
「まぁ 面白いなってな」
「面白くないですよ」
「面白いだろ!2011年と平成11年間違えてんだぞ!?」
「二度手間サイテー」
春喜はムスッとしながら席に着く
「真鍋ぇ!」
課長の手招き
「あらら」
「こってり絞られてきて下さい」
春喜は笑顔で真鍋を送り出す
「望むところだ 無能課長め」
(アナタも同じでけどね)
毒づく
「岩瀬 半分寄越して」
隣の席から手が伸びる
「え、いえ 大丈夫です」
「ん 俺がチェックしなかったからだろ」
「佐藤さんのチェック飛ばしてしまったのは俺なんで」
「ふっ」
友紘は笑う
(は?今笑うとこかよ…)
春喜は呆れながら友紘を見る
「………」
友紘は優しい目で春喜を見ていた
「……佐藤さんってゲイですか」
「何だソレ」
笑ってる
「いえ、身の危険を感じたので」
「ふっ 人の好意をそう取るか 随分ひねくれてるなぁ」
「はい」
「まぁ 警戒はしといて間違いは無いな」
「え…」
「岩瀬、可愛いからな 間違いがあってもおかしくないだろ」
「何…本物のゲイなんですか…」
「まさか」
(え…どっち?つーか好きになっていい?)
「岩瀬?何か変な顔だぞ」
戻って来た真鍋が春喜を覗く
「…佐藤さんがセクハラしてくるんですが」
「はぁ?」
真鍋は笑う
「冗談の範疇だろ アホか」
友紘は呆れ顔
(あ…マジ冗談だった…ウソ…手遅れだ…)
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