ありきたりラブロマンス

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そんなこんなで半年もしないうちに齢7、8歳の幼い俺は猿轡やら拘束具やら、マニアが見たら喜びそうな厳重体制下に置かれてた。 そのころにはもう逃げ出すのも疲れたし、こんな僕が家に帰ったところでどうなるとも思えなくて、迷惑かける位ならいっそこのままここにいて家族は僕のことなんて忘れて幸せになってくれればいいと思った。 その更に一年後、僕がこの学校に入ることを相談もせず二つ返事で了承したのは僕の両親で、ありがちなまでにたくさんの金を 受け取ってたって知ったんだけど。 そのころにはもうそんなことくらいじゃ悲しいとは思わなくなってたね。」 彼は一瞬天井を見上げると、またすぐにニヤニヤとした笑みを整った顔に浮かべ、僕を見た。 「そうして僕は青凪で学べる限りのすべてを吸収して実践したよ。怖気づかない、すべては殺すため、すべては人のため、正義や自分のためには生涯一度たりとも動かないように数限りない殺人を学んだよ。 隠密とでも言うような、僕は多くの人間を公で殺すようなことは特化していなかったから、闇にまぎれて、はは、かっちょいい。 闇にまぎれて月光仮面のように、対象を成敗したさ。 ……まあ、明るいとこでも公でも大人数でも相手にしたけどね。限ってたら授業になんないし。 そんな授業を繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返しくり返し、7年繰り返した夏のこと。僕はもう学ぶことはないと学んだわけ。 頭の上がんない教師とか、先輩いたし頭がいいわけでもなくて、純粋な殺しの才能と実力以外は平々凡々だったけど、もうここにいたって何もねえし、これ以上僕は何にもならねえ。そう思った。 でも僕は“対人間用殺傷工具養成スクール私立青凪学園”の生徒だ。自分のためには殺せねえ。 となりゃあ青凪は縛り付けておくことに関しては最強の場所だ。 ロリコンが小躍りするようなかわいい少年時代から“人のための殺し”“殺しのための殺し”を教わってきた自分の脱出がかかった僕と、教師のために殺す覚悟で僕を逃がすまいとするスクールメート。 ほとんどの教科で首位独占たって殺しに特化した僕は殺せないときはただのちょっと強いイケメンだ。 考えればどっちが勝つかなんて、簡単にわかるだろ。」 僕の目を見て、疑問符なしでたずねる彼は楽しそうに笑う。 僕の目は強まる腹の痛みと比例するように霞んでいく。
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