ありきたりラブロマンス

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彼は答えない僕を気にもしないように、大きく笑ってナースステーションの受付台に座った。 「うへー、死にそうな奴ってしけてんなあ。僕、楽におなり。一発でしとめるわよん。みたいなタイプだから、死に際っていまいちあわないんだよね。 いやー、こんなもんか、しけてんなあ。死にそうじゃん。ウケるー。」 「いいから、」 話を続けろと僕は催促した。彼はつまらなそうに口を尖らせる。 「いちゃもんつけんなよな。僕には時間があるんだからいいじゃないか。」 無言の、というかもうほとんどしゃべれない僕に彼は大きくため息をつく。 「で、どこまで話したっけ?幼馴染は出たっけ?まあ要点だけかいつまむよ。 えっと、そんで青凪から出れない僕はもうピンチなの。学ぶこともないのにあそこにいるのは人格逝っちゃった僕でもきついものがあったんだよ。 青凪の名前知ってるなら、中で何やってるかも知ってるだろ?あそこは知っちまえばある程度までは楽に探れるだろ。 奥の奥を知られねえようにな、表向き、いや世界は裏なんだけど、その中でも表面上の情報公開制度?知る権利ってやつは徹底されてんだ。 まあ、満足行く情報が手に入ったって奥で何やってんのか知れなきゃ学園は握れないのにな。握ろうとも脅そうとも思っちゃいないんだよね。 青凪は利用する位が丁度いいよ。 奥の奥なんざ知っちまったらそれこそ人間には戻れ なくなっちゃうね。 笑えんぜ、あそこは人のいるところじゃない。 酷いもんだよ。数秒前まで仲良くおしゃべりしてた女の子の首を切るなんてのが、朝の会に組み込まれてたクラスもあったよ。 で、俺は殺すことを考えた。自分のための殺しを校内でした。どうなるかはわかるよな。 一瞬で終わった。いや、一瞬てのは三日天下みたいな比喩なんだけど、とにかく超早く終わった。当たり前の結果だ。 でも、僕は死ななかった。 殺すすべを心得てるってのは、死ぬすべを心得てるってことだ。同じように、あの女は殺さないすべを心得ていた。 危険分子は殺さず生かさず。生かして殺そう。僕の可愛い可愛い学友兼幼馴染は学園きっての殺さないエキスパートだった。死なないエキスパートだったから。 あいつは人を使うことを学園でみっちり学んだ生徒だった。」 彼は22個のボタンで留まってると言う豪奢な黒の仕事着を22個のボタンに沿って破いた。
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